柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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  チェンバレンは、『日本事物誌』に日本の「流行(Fashonable Crazes)」について書いている。 「Craze」の意味から考えると、むしろ「流行熱」とでも訳す方がよいのかもしれない。 そこで、彼は、冒頭に「日本人は長い間動かずにじっと立っていたから、時間の損失を埋め合わせるために、今や急いで何度も動かなければならない。 数年毎に新しい流行が起こり、国民は―少なくとも国民のうちで東京に住んでいる人々は―一季節(シーズン)の間は夢中になる」と評している。 

最初の流行は、1873年(明治6年)のウサギの流行なのだそうだ。 私自身知らなかったのだが、この年、ウサギが輸入されるまで日本人はウサギを知らなかったらしい。 それが、時には1羽1000ドルも白のだそうだから驚きである。 そこで、この年に付いて年表を調べてみた。 文化・社会の項を見ると、1月:尼僧の蓄髪・婚姻等の自由化、2月:仇打の禁止、キリスト教禁制の高札の撤廃などが眼を引き、政治・経済面では、1月の神武天皇即位日・天長節を祝日に制定、五節句をは廃止したとある。 どうも、ウサギの流行に関係するような事実は見当たらない。 してみると、この流行は、もの珍しさが原因なのか。 余りの熱狂に、翌年、政府はウサギに(人)頭税を課した。 終焉もあっけない。 

1874年~5年には、闘鶏が流行した。 この年、2月には佐賀の乱が起こり、秋田や高知などでは地租改正に反対する農民騒擾が21件発生した。 『読売新聞』が創刊されたのも、11月のことである。

1882(明治15年)~3年には、予約による辞書などの印刷がブームであった。 どうも詐欺まがいのインチキ企業が多く、裁判沙汰になったそうだ。 3月:『時事新報』が創刊、20日に上野博物館開館式。 自由民権運動が盛んだった。 自由党の機関紙、『自由新聞』、『絵入自由新聞』が創刊されたのも、この年である。 また、北海道についていえば、開拓使が廃止され、函館・札幌・根室の三県が置かれた。

1883年頃は、学会や○○協会などの団体創設熱の時期で、「大日本教育会」が創立され、翌明治17年には、「大日本音楽会」、「人類学会」が設立された。 また、東京英和学校(青山学院の前身)が開校。  悪名高き「鹿鳴館」の開館式が行われたのも、この年(明治16年)の11月のことである。

1884~5年は、運動競技熱が起こる。 ただ、これを思わせる事実が年表にはない。 明治18年(1885)に、「英吉利法律学校(中央大学の前身)」と「家族女学校」が開校している。

1886(明治19年)~7年は、ワルツと盛大な葬儀が特徴と書いている。 ワルツは鹿鳴館の影響か? 盛大な葬儀というのは、この頃、葬儀の形が変わったことによるのだろう。 東京が大都市化し、従来の葬式組のような、それこそ、ご近所による葬式が困難になり、営利の葬儀社が生まれたのではないだろうか。 因みに、我家は浄土真宗(西本願寺)であるが、葬式を運営するのは、「同行」と言う組織で、喪主以下家族・親戚は、葬儀の運営には係らない。 一向宗の名残か、「同行」は一種の秘密結社のようなもので、「同行」のメンバーそれぞれも、親戚・縁戚関係にはないのである。 大体、五軒が単位になるようで、この五軒が中心になって葬儀が運営される。 もしかすると、戦国の昔、一向一揆の門徒衆が芋づる式に摘発されるのを恐れたための知恵なのかもしれない。 「秘密結社」めいた組織というのは、そうした背景があるからである。 もっとも、浄土真宗の門徒全てが、そうなのか、それとも、我家の周辺がそうなのか、それこそ秘密めいているのである。

また、この頃、「ドイツ麻疹(かしか)」が流行したそうだ。 もっとも、これは病気の麻疹ではなく、ドイツのものを真似るという流行。 チェンバレンは、何事も自由なアングロサクソン的、特にアメリカ的なものより、厳格な君主制のドイツの方が安全だと云う思惑が作用したのではないかと推測している。

まだまだ続くのだが、今回は、この辺りまでにしておこう。
 

 

 

Best regards
梶谷恭巨

 


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