柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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  マリア・ルス号事件の重要人物の一人、ロバート・グラント・ワトソン(Robert Grant Watson)について調べている。 というのも、インターネットで検索する限り、略歴などを掲載したサイトが無いからだ。 ところが、しれべて見るもので、ワトソンの著作があることが判った。 しかも、オンライン・リード・フリー、要するに無料で閲覧できるサイトがあるのだ。 「ONREAD.COM」というサイトで、プロジェクト・グーテンベルクのような、何らかのプロジェクトにようにも思えるのだが、調べてみると、矢張り、本屋のサイトであるようだ。 もし、そうなら、新しいビジネスモデルということになる。 というのも、登録すると、オンライン閲覧ではなく、ダウンロードも可能なのだ。 ただし、三日間限定だ。 試しに、ダウンロードを試みたが、サーバーが込み合っているのか、アポロジャイズのメッセージが表示される。

さて、その新しいビジネスモデルではないかというのが、著作権の切れた書籍を、恐らくOCRで読取、それを編集したのではないかと思えるのだ。 こうした書籍を復刻版として販売しているのだから、このサイトのONREAD.COMは、それを目玉というか、おまけにして拡販を図っているのかもしれない。 実際、こうした復刻版をアマゾンでも販売しているのだ。 しかも、結構いい値段だ

余談が長くなったが、件のワトソンの著作と言うのは、英国外交史とでもいうべき著作なのだ。 この書名から、僅かではあるが、ワトソンの足跡が窺えるのだ。 このサイトでは、著作の内、三冊を閲覧できる。

(1)「A History of Persia from the Beginning of the Nineteenth Century to the Year 1858, with a Review of Principal Events that Led to the Establishment of the Kajar Dynasty」

その後の調べで、原本は、トロント大学蔵書、出版社はロンドンの「Smith, Elder & Co.」で、1866年の出版であることが判った。 また、序文を、ロンドンのセント・ジェームズ・クラブで就筆してる。

(2)「Spanish and Portuguese South America during the Colonial Period」

こちらは、調査中だが、出版社は、ロンドンの「Trubnee & CO.」で、1884年出版である事が判った。 余談だが、この本のデジタル化には、Googleが関与している。 もしかすると同社内に、古書のデジタル化部門があるのかもしれない。 以前から、古書・古本のデジタル化の必要性を感じ、柏崎通信デジタルライブラリーを細々と始めていたが、協力者も無く、また視力の低下で中断状態になっている。 しかし、インターネットを検索していくと、以前に増して、デジタル化の動きが繁多になっているよう思える。

(注)セント・ジェイムズ・クラブ: 1857年に、民主党の政治家・外務大臣だったグランビル伯爵とイタリアの外交官・アゼグリオ侯爵・エマヌエル・タパレッティによって創設された、外交官を中心とした社交クラブで、1978年、財政難でブルックス・クラブと合併、クラブハウスを明け渡した。 その後、クラブハウスは、国際言語学校本部(International House network of Language School)に使用されたが、2007年からは、マレイシアに私立大学、リンコクウィン(LimKokWing)創造技術大学のロンドン分校として今も使用されている。 余談だが、英国の政治経済の舞台が、戦前まで社交クラブだったことは有名だ。 これも余談だが、横浜に、同名のクラブ(セント・ジェイムズ・クラブ迎賓館)がある。 気になるので、問合せしたところ、詳しい人もいないようだった。 ただ、元は横浜市の迎賓館で、クラブの歴史も60年に及ぶという。 また、建物は、イギリスのものを移築したりしているそうだ。 もしかすると、命名に本家のクラブ名を使ったのかもしれない。 興味深いことだ。

(3)「The Diplomatic Service; An Abstruct and Examination of Evidence Taken by the Select Committee of the House of Commons in 1870」

 調査中。 というより、サーバーが混んでいる所為か、アクセスできないで居る。

いずれも長い題名の書籍である。 書誌が明記されていないので、出版された時期が不明だが、題名を読む限り、ワトソンは、来日前に、ペルシャで勤務していた事が判る。 また、その後(来日前後)に、ブラジルは確かだが、スペイン語圏の南アメリカの何れかの国で勤務した事になるのだろう。

その後、デジタル・ライブラリーで、若干読めた(先の理由で)のだが、著者であるワトソンの事は余り書かれていない。

それにしても、欧米では史料のデジタル化が急速に進んでいるようだ。 プロジェクト・グーテンベルクは、1971年に創設された書籍(著作権の切れた)の電子化プロジェクトだが、元々、イリノイ大学の学生(マイケル・S・ハート)によって始められたもので、それがインターネットを通じて、全米の大学に広がり、世界最大のデジタル・ライブラリーになったものだ。 それに比べ、日本のデジタルライブラリー(国会図書館など)は、進んではいるが、単に、書籍のコピーを電子化したものに過ぎないのが実情だ。

また、各地の図書館の資料室などでも、デジタル化が進められているようだが、精々、電子化(コピー)で、デジタル化は遅々たる情況のようだ。 それに、もう一つ悪いことは、デジタル化しても囲い込んで、公開しないことだ。 各地の図書館や資料館に問合せをするが、口ぶりでは、デジタル化したものもある気配がする。 しかし、提供してもらえないかと聞くと、大抵は、拒否される。 中には、百年も前のことなのに、個人情報保護法を盾に取り、全く意味不明な回答をする処さえあるのだ。

どうも日本人は、「歩いた後に考える」のでもなさそうだ。 その後も考えないのだろう。 インターネット匿名性を問題視する一方では、情報の公開を迫り、情報の公開を求めると、法律を盾に取り、公開を拒むのである。 一見、次元の違いがあるように見えるが、個人であろうが公人であろうが、情報が公開されない、言い換えれば、顔の見えない社会ほど怖いものは無いのである。 社会学的にも、スキャンダルや、井戸端会議的ゴシップが、一種の安全弁になっていることが知られている。 情報は、階層を越え、次元を超えて、それぞれを結びつける媒体なのだ。 その媒体をインフラだと思っている人が多い。 何とも、恐ろしい話である。 非公開あるいは匿名の世界に、アイデンティティは存在しないのだ。

話が大きく逸脱したが、先にも書いたように、著作権期限切れの書籍のデジタル化が、新しいビジネスを生み始めたのを感じる。 ちょっと説明すると、先ず、電子化、次のデジタル化、そして書籍としての販売へと移行している。 この動きには、20年くらい前から気付いていた。 プロジェクト・グーテンベルクに加入したのが(昔は会員制だった)、長岡時代で、当時は、CD(ウォルナット)で頒布されていた。 それが今や最大のデジタルライブラリーである。 それに倣った訳ではないが、柏崎通信デジタルライブラリーを、もっと続けたいとは思っていても侭ならないのが現状だ。 長岡の頃からの夢なのだが。 

Best regards
梶谷恭巨
 

 

 

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