柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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 承前。

 

 尚、前回「越後の縮緬問屋」について書いたが、一つ付け加えると、第11代東京帝国大学総長・小野塚喜平次(柏崎県長岡)の門下四天王と云われた政治学者・蝋山政道氏は、一般には高崎出身と云われるが、祖父の代まで、大久保陣屋に近い大洲村中浜の六代続く縮緬問屋で、行商人40名を数える老舗だったと聞く。氏の親の代、縮緬に見切りをつけ、高崎の酒造の株を買って、祖父母を残し、一家して高崎に移住したそうだ。しかし、子供たちには故郷柏崎で教育をという方針で、四兄弟の内上の三人までが大洲小学校を卒業した。因みに、高崎近辺には、越後出身の酒造家が多い。長くなるので省略するが、越後杜氏との関係が深い。余談だが、我が女房殿の父上も、館林で出かけた越後杜氏だったのである。

 

「雑事」(2)

 

白石正利氏 此人は未だ郡長と云うものの置かれぬ時代に柏崎の取締と云うを勤めれ居られたが、仲々凡(スベ)ての事に熱心で吾が柏崎に於ても氏の為めで、大に土地の隆盛を得たのである。最も長岡に取締として五六年も居られた事もあるが、就中(ナカンズク)貸座敷の為めには大に尽瘁(ジンスイ)されたもので、女郎屋禁止後、再興の時抔の助力は実に大なるものであった。是が為めに吾が北越の同業者は近年迄、氏の為めに追善を遣って居たが、今も尚お継続して行って居る処もある。最も氏は官金費消の罪を以て鉄窓に繋がれた事もあるが、間もなく許されて、小笠原頭司になられ、後ち病痾の為めに没せられたそうである。

 

 以上。

 

(註1)白石正利: 生没年不詳。しかし、『太政類典』(太政官、第二編明治4年~10年・第35巻・官規9・賞典恩典7)及び『公文録明治十年』に次の様な記載がある。概略を記すと、明治9年10月29日に起った士族反乱未遂事件「思案橋事件」の共同従犯(主犯は、長岡久茂)松本正直外二名が新潟県下に逃走、新潟県三等警部白石正利は、羊頭巡査畠山忠次郎、同中村義久を指揮して、三名を捕縛逮捕した。その功績で、白石正利に賞金15円、外二名に8円が下賜されたとある(『太政類典』)。『公文録』の「警部巡査賞典之儀伺」は、右大臣岩倉具視宛、署名は内務卿大久保利通代理・内務少輔前島密(明治10年2月21日)とある。尚、この「伺」は、三人の警官が先ず県令(永山盛輝)へ、県令が、内務卿大久保利通へ伺うという構成で収録されている。

 また、新潟県の公式ホームページ(建設・まちづくり)に次の様な一文がある。その中の一節を紹介する。

「長岡と対岸の本大島(現西長岡地区)柏崎との交流には信濃川が障害となっていた。このように渡船は不便であり危険で、しかも時代が進むにつれて輻輳する物資・人員を円滑にさばかれず、そこで大胆にもこの大河に橋を架けようと長岡警察の白石正利警部・大区長三島億次郎や大森佐太郎・田中二四郎・赤沼寿水等が立案をした。がしかし、当時としてはあまりにも破天荒な計画であり実現できなかった。しかもその頃、長大橋の架橋技術は一子相伝の技術であり、棟梁・人足手頭の技量がすべてを左右する時代であった。このような事から、しばらく渡船に頼らざるを得なかったが、その芽は一人の庄屋によって培われていた。その人は三島郡岡村古新田(現長岡市緑3丁目)の庄屋廣江椿在門である。」

 しかし、『長岡歴史事典』その他で、事績等探してみたが、インターネットでヒットしたのは、先の新潟県公式ホームページ以外に見つけることはできなかった。

(註2)郡長: 新潟県に郡制が施行されたのは、明治30年1月1日だった。この事から推測すると、白石正利が貸座敷問題に尽力するとあるのは、明治13年の県令の事だろうか。

(註3)頭司: これは、「島司」の誤りと思われる。すなわち、明治31年7月14日付の「南鳥島ヲ東京府所属小笠原島司ノ所管ト為ス」とい内務省通達がある。

 

 余談だが、長岡の長生橋の工事を落札したのが、「植木組」である。植木組は、その工事の為に、現在の柏崎工業高校を採砂場として購入したが、市民一丸となった「工業学校誘致運動」の為、その用地を原価で提供した。因みに、建設費用はおよそ40万円、誘致に名乗り出たのは、村上と高田だったが、柏崎は、「県の援助は一切いらない」と募金運動を展開した。 日本石油と理研が、それぞれ10万円を寄付したと云われる。結果、県下2番目の工業高校が柏崎に誕生した。

 

Best regards

梶谷恭巨


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