柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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 さて以下の文章だが、これを書いたのは昨年の5月、かれこれ一年になる。読み返して赤顔する処もあるのだが、兎に角、その当時を振り返りながら、掲載する。尚、この後に、写真等続くのだが、百年の歳月が過ぎたとは言え、当時の状況と今の価値観が異なり、この『柏崎華街志』をアップロードする際にも考えた事だが、時系列とは過酷なもので、必ずしも今生きる我々の感覚では、認識できない事象も起りうるもだ。


 さて、前回に続き『柏崎華街志』を紹介しよう。 「序」に続いて、漢詩(七言絶詩)二首があるが、白文(返り点などが付されていない漢文)である。 内容的には、指して観るべきものが無いように思われるが、一応紹介する。 ただし、詩文なので、下し読みに自信がない。 ご容赦。
 

 題詞

 贈芍採蘭詩不刪、「贈芍採蘭の詩は刪らず」
(芍を贈り蘭を採る詩は、なかなかまとまらないものだが、)

 采風察俗記周官、「采風察俗の記は官に周く」
(風俗を取材した記事は、広く知られるところだ。)

 諸君休怪品郎筆、「諸君休怪して郎筆を品し」
(皆さん少し休んで、私の書いたものを評し、)

 細写華街紙上看、「細写する花街、紙上で看よ」
(花街のことを事細かに描いたので、読んで欲しい。)

 其二

 繁華滅却昔時栄、「繁華滅却は昔時の栄え」
(繁盛し寂れたのは、昔栄えたことだ、)

 扇閣瓢楼幾変更、「扇閣瓢楼は幾変更」
「扇閣や瓢楼は、何度、代替わりした事か、」

 非獨新街知沿革、「新街の沿革を知るは独りに非ず」
(新町の歴史を知る人は、一人ではないだろう、)

 柳情花態亦分明、「柳情花態、また分明す」
(遊女たちのしなやかで艶やかな姿も、また明らかである。)
 

 と、まあ浅学な知識で訳しても見たが、さてどうなのだろう。 ただ、表意文字の良いところで、字面からイメージすることは難しくはない。 強いて言わせてもらうと、対句や韻は踏んであるようなのだが、七言絶詩として、果たして性格なのだろうか。 平仄を一部調べてみたが、何とも言い難い。 作者が、敢えて「題詞」としたのは、その辺りの事情があるのかも知れない。 しかし、いずれにしても、当時の人々の漢学に対する素養の程が窺われる。 柏崎には、以前から藍澤南城の「三余堂」あり、また、明治後には、北溟義塾ありで、漢詩漢文の命脈は、明治末に至っても広く市民に継承されていたようだ。 どの辺りから、この漢文漢詩の系譜が希薄になるのか、寧ろその事に興味が湧く。 

 前回紹介したので省略するが、この「題詞」は、「贅疣仙史」と号する柏崎日報の編集者と思われる人物が、菊の香りのする編集室の一隅で、戯れに作したものである。 因みに、『柏崎日報』は、その前身である『柏崎新聞』は、明治33年5月10日に創刊され、明治39年1月1日、週刊『中越新聞』と合併して、『柏崎日報』となった。 小熊三郎氏の『柏崎日報物語』によると、『柏崎華街志』が発刊された明治42年当時の社主は桑山直三郎氏(明治45年、社主を引き、大正3年10月26日没)であったようだ。 

 尚、「其二」にある「扇閣」「瓢楼」は、後で出てくるのだが、共に柏崎の老舗の名前である。 特に、「瓢楼」は、文中にもあるように、歴史が古く、当初は、「瓢宅」とも言ったようだ。 以前紹介した十返舎一九の『金の草鞋』に登場するのが「瓢宅」である。 

 今回は、この部分を省略し、作者の「自序」から始めるつもりだったが、省略するのも序の作者に失礼と思い、自信のないまま紹介した。 下し読み等、間違いがあればご指摘、ご教授頂ければ幸いである。 

 ところで、先ほど発掘現場から電話があり、明日より出てくれないかとの事。 何でも、人が5人くらいしか集まらず、県の学芸員からせっつかれたようである。 日当6200円では、景気が今一の状況でも、よほど発掘現場が好きでもない限り、人は集まらないだろう。 という次第で、しばらくは休刊状態になるかもしれない。 何しろ、久しぶりの肉体労働、(発掘作業というのは、天候気候にもよるが重労働なのである)、しばらくは筋肉痛やらで、書く事もままならないだろう。 ご容赦。 

Best regards
梶谷恭巨


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