柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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 蝋山政道について、少々訂正する必要がある。 杉捷夫と大洲小学校での件である。 何処に書いてあったのか思い出すのに時間が掛った。 杉捷夫の『人の影・本の陰』であることに間違いはないのだが、父親についての節にもない。 大抵付箋を入れているので、何処かにあるとは思っていたが、彼方此方に入れていて、一々確認していた次第である。

 在ったのは、「私の人名簿から」という章の「小山長四郎さん」という節だった。 この小山長四郎いう人は、蝋山政道の弟(四人兄弟の末っ子)で、群馬県の松井田に養子に行かれたので、小山姓になったそうだ。 蝋山家は、祖父の代まで六代続く、刈羽郡大洲村中浜(現、柏崎市中浜)の越後上布や縮緬を扱う行商の元締めだったそうだ。 それが、先に書いたように親の代に、造り酒屋の株を買い高崎に出た。 小山長四郎氏は、その高崎で生れ養子に行かれたようだが、その後、高崎に移りったのか、1980年代まで美峰酒類という会社の社長だった。 文才が有ったようで、『風灯』とい自伝的小説を同人誌に連載され、後にそれが私家本として出版されている。 少し調べてみたら、美峰酒類の現在の社長は、太刀川氏とあり、長岡の十日町に支社があるとのこと。 名前からして、あるいは長岡に新潟支社があることから、長岡との関係の深さも感じる。

 蝋山家の四兄弟は、皆、大洲小学校に通うのだが、先の事情で、高崎に移った。 しかし、長男である政道を除き、大洲で健在であった祖父の元から大洲小学校に通っている。 記憶違いしていたのは、この点である。 杉捷夫の兄と蝋山政道の末弟・小山長四郎とが同級生だったのだそうだ。 杉捷夫は、二級下で、兄の親友でもあった小山長四郎のことをよく記憶しているとある。 杉捷夫は、父の転勤で直江津に移り、高田中学に一年通った後に、柏崎に戻り、柏崎中学を卒業している。 年齢からすると、卒業は大正9年辺りか。 (父の友人であった羽石重雄は、既に長岡中学に転出している。) 蝋山兄弟の次弟・三弟は、既に柏崎中学を卒業しており、件の小山長四郎は、高崎中学に移っていたとある。 因みに、杉捷夫は、その後、三校(京都)から東京帝国大学に進学した。

 とまあそういうことなのだが、杉捷夫も書いている様に、人間の縁とは不思議なものだ。 氏の言を借りると、「私の人名簿は蜘蛛の巣のようにふしぎな縁の糸で綴り合わされている」と。

 序でだから書いておくと、杉捷夫の祖父・杉隼雄は、「典型的な下級武士、奇兵隊の小隊長として蛤御門の変に参戦したという。 どういうわけか、維新後は、軍人にならず、さっさと辞職、下男ひとりを相手に毎日海釣りをして暮らしていたらしい。 明治七年八月末、台風の季節に舟で沖へ出て遭難、下男の遺体はあがったが、祖父は行方不明。 祖母は十六の歳に嫁に来て翌年父が生れたというから、二十そこそこでやもめになったわけ。 三つになる男の子ひとりをかかえてのやもめ暮らし、下級武士の藩禄公債の額など知れたものだから、それでも奨学金も受けたものと思うが、ふしぎにそのような育ちを感じさせるふんい気は家の中になかった。 せいぜい祖母が孫たちに食物を粗末にしないしつけをしてくれたことくらい。 熱心な門徒だった祖母の極端な殺生嫌いには恐らく、祖父の劇的な死が反映していたのかも知れない。」と書いている。 (『人の影・本の陰』、岩波書店、1983年刊から引用)

 戊辰戦争の時、長州の主力は、北越戦争に参戦している。 もしかすると、杉隼雄もこの戦に従軍していたのかもしれない。 その子が、柏崎を発祥の地とする日本石油の技師として、半生を過ごすのであるから、人の繋がりは、当に蜘蛛の糸の如く絡みあっているのかもしれない。

Best regards
梶谷恭巨

 


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