柏崎・長岡(旧柏崎県)発、 歴史・文化・人物史
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 前回の続きの様なものだが、『柏崎百年』には驚くことが多い。『近世先哲叢談』(正上下・続上下は)、江戸期に於ける学問の系譜を調べた時に最も参考にした本だ。ところが、内容ばかり見て、その著者に目を向けて居なかった。実は、『柏崎百年』を読んで、松村春風と操が同一人物であることを知ったのだ。何とも間の抜けた話である。

 

 一時、藍沢南城について調べて居た事があるのだが、そこから、南城の父・北溟の師である折衷学の片山兼山を調べ、更に、その関係から折衷学に関わる人物、例えば、「寛政の三博士」である古賀精里、柴山栗山、尾藤二洲らを芋づる式に辿ったものだ。その時に、参考にしたのが、東条琴台の『先哲叢談』であり、その流れで『近世先哲叢談』に至った。結果としては、『江戸期に於ける学際ネットワーク』なる人物関係図を作成する事になった訳だ。ただ、未だに完成していないのも事実なのだが。

 

 その一つである『近世先哲叢談』は、柏崎出身で柏崎小学校の京都をしていた松村操が、上京し文筆活動を始めて(明治10ねん)、最も脂がのった明治30年代(出版は明治13年)に書かれている。因みに、『近世先哲叢談』に掲載された人物は、正編で22人、この中には、先の「寛政の三博士」のほか、頼山陽一家や菅茶山、水戸の藤田東湖や会澤正志、野々村竹田、安井息軒などが上げられ、続編には、藍沢南城の師である皆川淇園、佐藤一斎、これも柏崎と縁が深い「安政の大獄」に連座する藤森弘庵などが揚げられている。

 

 因みに、『近世先哲叢談』は、漢文である。この本は、「近代デジタルライブラリー」に収録されているので何時でも閲覧は可能。余談だが、ダウンロードして気づいたのだが、正編続編の表題が入ら代っているので、例えば、正編の下は続編の上の様に、注意が必要である。

 

 また、「近代デジタルライブラリー」には、この外、松村操の代表的な著作が収録されているので、興味ある方は、一見。因みに、収録されているのは、重複もあるが全部で72件。例えば、『人間万事金の世の中:金もうけ金ため百ヶ条』などは、当時の世相を知る上で、実に興味深い本である。

 

 いずれにしても、明治10年とは言え、一人の出版数としては、恐らく最多に近いのではないだろうか。兎に角、驚きである。余談だが、『藍沢南城、詩と人生』の著者・内山知也先生が、湯島聖堂の確か理事長になられるのも、こうした背景があるのではないだろうか。

 

 今は、高校でも、古文・漢文は見捨てられた科目になって居る様だ。ドナルド・キーン先生ではないが、これだけの背景を持つ柏崎でさえ、日本文学は廃れようとしている。よそ者の私が言うのも何だが、実に残念な事だ。何とかならないものだろうか。

 

Best regards


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